2002年にウルグアイ フォトクラブで行われたフォトジャーナリズムのワークショップの際の
作品。このプロジェクトは、僕にとって、以前の作品からの2つの点でターニングポイントと
なった。一つは、作品の題材である。以前の僕の作品は、アブストラクトな題材(主に建築)を
テーマにしていた。もうひとつは、ストーリーを語るための方法だ。建築を扱ってきた今までの作品と違って、この作品では、完全にある人間が関わることが必要だった。
 
このワークショップでは、始めから、モンテヴィデオに起こっている、都会の社会的な腐敗を
テーマとして作品をつくることを考えていた。そして、あるひとつの具体的な地区、ゴーズ地区
に焦点を当てることにした。それは、自分がよく知っている場所だ。なぜなら、僕自身、
子供時代、そこで何年かを過ごしたことがあるからだ。
 
ゴーズ地区は、20世紀前半には典型的な中流階級の住む場所だった。その頃のウルグアイは、
その、高い生活水準故に、「ラテンアメリカのスイス」として知られていた。
当時、より良い生活を求め、市民戦争や厳しい経済状況から逃げ、明るい未来を求めてやって
きた、ヨーロッパの移民(特にスペインから)を受け入れてきた国、ウルグアイ。その中に
あって、ここ30-40年のゴーズは、近年のウルグアイの社会の大きな変化に最も影響を受けて
きた地区である。家庭も経済もゆっくりと崩壊し、閉鎖され、人々の生活水準も落ちた。
 
人々は、一時期あれほど繁栄した地区に、何が起こったのかといまだに不思議に思っている。
撮影にあたって、2002年にウルグアイを襲った経済危機のせいで、安全性が問題になった。
高価な撮影道具をある地域に持ち歩くのが困難になったのだ。そこで、僕は、外で何が
起こっているのかを暗に語ることのできる、家の中のものに焦点を当てることにした。
社会的な問題は、家庭環境に大きく関連してくる。そして、それは、常日頃から僕の興味を引い
ていたことだった。「公共の環境と私的な環境の間の関係」が、僕にこのテーマを選ばせた。
この作品は、家族の上を過ぎ去った容赦のない時間、疲弊、徐々にすすむ損傷、そして、
「不在」に住み換わられた家の中の孤独、を扱っている。
 
僕のこの家族との関係は、30年前にさかのぼる。この家族で、たった一人生き残った人間、
ホセのおかげで、僕はこの作品を撮ることが出来た。彼にとって、もはや体の一部になったか
のような親密なものたちを、写真を通して、外界に晒すことは、とても勇気のいることだった。
これは、また、ある意味、僕にとっての自伝的な仕事になった。なぜなら、この作品を通して、
僕は、自分自身の家族の歴史を深く見つめることになったからだ。
僕の本当の興味は、ある一人の人間の人生を実録することではなく、「ウルグアイの家族」に
かつて何があって、今何が残っているのかということにあった。
 
最後に、彼の家族の魂にこれ程まで近づくことを許してくれたホセに深く感謝の念を表する。
このことがあったからこそ、僕は自分自身の家族をよりよく理解することができた。また、
この作品を完成させるに当たって、様々な形で助けてくれた全ての友人たちにも、感謝して
 
やまない。
 
© 2002 ダニエル・マチャド
ウルグアイ

 

 

Daniel Machado in the house with his mother and godfather.
 

 

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